カヌレットを食べた話
わたしはカヌレが好きだ。カヌレとは溝のついたという意味らしく、独特の形をしている。型をぱっと見るとゼリーを連想する人が多いかもしれない。フランス菓子というと少し敷居が高いように思えるが、外側は蜜蝋を塗って焼くため艶めいてカリッとした食感を持ち、中はむっちりと弾力がありながらも柔らかく、ラム酒とバニラがほんのり香る万人が好む焼き菓子だ。趣向を凝らした伝統的なカヌレが昔から大好きなのだ。地元を出て此方に越して来てからはフロよりもドンクの量り売りの小さいカヌレを一口で頬張るのが何より楽しみだった。食べやすくてオススメ。
何を隠そう趣味で気が向いたときにお菓子を作ったりするのだがカヌレは買う専門である。
だってレシピ調べたら混ぜた生地最低でも半日、理想は1日以上寝かせるらしいよ。せっかちには無理だった。超ロングスリーパーじゃん。
さて、話は逸れたが先月11日に発売した"カヌレット"というお菓子がある。カヌレはわたしの預かり知らぬところでブームになっていて、コンビニでも中々お目にかかれないそれは幻かと思うほど瞬く間に売り切れが続出していた、らしい。ちょっとその頃北海道でのライブ前でお菓子とか探してる場合じゃなかったゴメン。
そんな中少し落ち着いたのかようやっと最寄りの薬局で並んでいたのだ。わたしは迷わず籠に入れた。
大好きなカヌレをこうも手軽に食べられる期待に胸が踊る。次の日、封を切った。
チャック袋を開けるところりとカヌレが現れる。随分と小さい粒だった。ええいそんな大きさになって。愛いやつ。遂に口に入れた。
脳が思っていたものと違う情報を処理する際、人間は行動を停止するようだ。
1度咀嚼するとまず外側が思ってたより柔らかい。弾力はあるがパッケージにはサクッと書いてあるのに対し本来のカヌレのカリカリ感というより噛むたびシャリシャリしてきた。コーティング?なんだろう。
そして現れた中身。ぐにぐにしていた。もっちり感よりぺとぺとしていた。そして舌に残る怒涛のラム。直接口に流し込まれたかと錯覚した。ラムが殴りに来たのかと思った。
────コレジャナイ感。
端的に言えばラム味の甘いグミだったのだ。
兎に角例えようがない。悲しさでいっぱいだった。わたしはカヌレに裏切られたのかと泣きそうだったのだ。
UHA味覚糖曰く、小麦粉の代わりの澱粉とゼラチンを使っているらしい。この時点でもう焼き菓子でもなんでもなかった。誰よ。更に非焼成。がっつりラムが残っていたのもそのせいだろうか。てかUHA味覚糖の時点で気づくべきだった。飴とかグミが専売特許のとこじゃん。CM見てBE:FIRST(綴り合ってますか?)が美味しそうに食べてたもん!オーディション勝ち抜いた新進気鋭のBE:FIRSTだよ?ごめんメンバーのお名前も全然知らないんだけど。そもそも何人ですか。勉強不足。
全く下調べをしないで買うからこうなるのだ!って言われそう。
数千年後、書物で語り継がれるまま小麦を失った未来で作り出されたかのようなそこはかとないディストピア感。
申し訳ないがこれはカヌレ!と自信を持って声を上げるには些か抵抗がある。
でもUHA味覚糖の努力は凄い。
わたしは催眠術にかけられてもこれをカヌレと呼ぶことは今後無いと思う。ごめんね。
これを書きながらカヌレットは食べ終わりました。因みに整体から帰ってきた同居人にも食べさせたらスペキャ顔でどんどん眉間に皺寄ってたし1つでやめてた。
流しそうになった涙はその日のバンナムフェスで流したから大丈夫だよ。推し活最高!